俺自身、ブルース、ジャズ、ゴスペルからロック、ヒップホップ、
ニューオーリンズ音楽、アフリカ音楽までを全部ひっくるめた、
広い意味でのブラック・ミュージックも大好きで、聴き続けて
いるうちに、そういう音楽を日本人が演る場合の
消化の仕方をいつの間にか意識するようになった。
「アメリカやイギリス産のマナーでそのまま演ってもしょうがない。
日本人ならではのものがなければ」と。
DOUBLEがデビューしてしばらくは、アメリカR&Bのマナーを
追いかけているアーティストなんだろう、と思い込んでいた。
でもある時、TAKAKO嬢の歌声に潜む湿り気のようなものに気付いた。
それは日本の歌謡曲の中にも存在するような情念と言ってもいいものだ。
彼女はそれを歌い上げて表現するのではなく、抑え気味の歌で、
逆に裏側にある感情を読み取らせる表現をしてきた。
その様子は「たおやかさ」を漂わせていて、日本人ならではのものだった。
でも、R&Bの黒っぽさも充分にある。
まるで、光が強くなると影が濃くなるように、たおやかさが表れると逆に黒っぽさが増す。
矛盾してるようだが、日本人っぽさを出すと、R&Bの本質に近づく、ということだ。
それに気付くのに、少し時間がかかった俺は、そのとき密かに反省したものです…。
R&Bも、スタイルのハッキリしている音楽だから、
そのまま演ると、借りてきた感じや後追いの感じが付きまといやすい。
それを拭い去るために、様々なアーティストが試行錯誤をしてきた。
輸入されたものをどう消化して、日本人として演る意味を見出すか。
そこに説得力は生まれる。
DOUBLEは、たおやかさを説得力としてきたアーティストだ、と俺は捉えている。
でないと、あの歌いっぷりにはならないと思う。
でも、彼女はそれを意識してない気がする。そこがいい。
自分の背景を、音楽によって無自覚に語ってしまうことのカッコよさも
DOUBLEの魅力なんだよね。
「DOUBLEの曲って、本場アメリカ並みでカッコいい」と言う人は意外といるが、
アメリカ並みだからカッコいいのではなく、輸入したものをちゃんと消化して、
日本人にしかできないことを演ってるからカッコいいのだ。
これからも、そんな当たり前だけど忘れられがちなことを、
歌で、そしてその存在自体で伝えていってください。
デビュー10周年、本当におめでとうございます。